エンジン・サマー

エンジン・サマー (扶桑社ミステリー)

  •  ジョン クロウリー
  • 販売元/出版社 扶桑社
  • 発売日 2008-11

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復刊するという情報を耳にしてはや四年、かろうじて題名どおり小春日和に間に合ったといいたいところだけれどもちょっと遅かったか。今年復刊した『ハローサマー、グッバイ』のほうは題名通り、夏に復刊したことを考えるとちょっと惜しいところだ。
しかし、ある意味『ハローサマー、グッバイ』に対するカウンターパンチのような気もしないでもなく、実に判りやすかったあちらと比べれば、こちらは実にわかりにくい。どことなく内藤泰弘の『トライガン』の世界を彷彿させるのだが、それ故に見えない部分がもどかしいのである。
読んでも読んでもなかなか全貌が見えてこず、こちとら世界の秘密を知りたいんだ、とっとと見せやがれと思っているのだけれども、作者の方はそんな気は毛頭ないらしい。
そんなわけだから思わせぶりな話が延々と続いて、そして最後にがつんと世界の秘密が目の前に広がるのだろうと思いきや、最後まで曖昧なまま。しかし大きな世界の秘密は曖昧なままだったけれども、小さな世界の秘密にはガツンとやられてしまった。
まさかそんなところに落としどころを持っていったとは思わなかったよ。
『ハローサマー、グッバイ』のハッピーエンドな恋愛物語を鼻で吹き飛ばすような切ない恋愛物語、空からおりてくるモンゴルフィエ。80年代のブラッドベリとはよくいったものだが、そんなことよりもこの切なすぎるラストだ。見えないところからカウンターパンチを食らったかのような破壊力だった。
こりゃ、積読のままにしてある『リトル、ビッグ』も読まなきゃいけないなあ。

コメント

  1. 『 リトル、ビッグ〈1〉』 ジョン クロウリー (著)

    大都会の彼方、とある森のはずれに、此岸と彼岸とをつなぐ一軒の広大な屋敷「エッジウッド」が建っていた。そこでは現実と空想の世界が交錯し、一族は妖精の存在を信じていた。19XX年夏のある日、一人の青年スモーキィ、バーナブルが「エッジウッド」邸の主ドリンクウォーター博士の娘と婚礼を挙げるために屋敷を訪れた。「察するところ—君は、どんな世界に飛び込んでゆくのか承知していると思うが…」そこに暮らすことになったスモーキィは、やがて自分がその一族にまつわる謎と神秘の世界にからめとられ、長い長い物語のうちに引きずり込まれていることに気づきはじめた…。SF・ファンタジー界の異才ジョン・クロウリーの名を一躍高からしめた、壮大なスケールで描く現代の叙事詩。世界幻想文学大賞受賞作。

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