- 著 佐々木 丸美
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2008-12
ブッキングから復刊したもののさすがにあちらは四六版なので、懐具合を考えるとこうして文庫で復刊されるのは非常にありがたい。
『崖の館』から始まる<館>三部作と比べるとおそろしくミステリ度が低く驚いたのだが、<館>三部作の三作目『夢館』があのような展開になったことを考えると、作者の理想とするミステリは単なるミステリとはかけ離れていたのだろうということがよくわかる。
というわけで、本格ミステリとして期待して読み進めていくと、物語の途中で犯人が分かってしまうというか主人公自身が犯人を当ててしまうので、なんだこれはということとなるのだが、ある意味、そこから主人公が犯人に対してどのような行動に出るのかという倒叙ミステリ的な展開をしていくわけである。
そう考えるとデビュー作からして既にとんでもない構造のミステリを書いていたのだ佐々木丸美という人は、ということとなるのだが、しかし、ミステリとして云々以上に文章が繊細でそして物語として純粋に面白いのだ。
熱烈なファンがいるのがよくわかるよなあ。
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