- 著 ジョン・ブラナー
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2000
『原始惑星への脱出』を読んだ時にはブラナーの本をふたたび手に取ることなどないだろうと思っていたのだけれども、ブラナーの作品を未読なままで終わってしまっていいのかという部分もあり、他の作品に手を出すことにした。
でもって『テレパシスト』だ。
うーむ、とにかく地味だ。この本がまだ書店で入手可能な頃に、手に取ろうともしなかった理由がよくわかる。
読んでいる最中に何度投げ出そうかと思ったくらい地味な展開なんだけれども、しかし、後からボディーブローのようにずしりと効いてくるのだ。
そして読み終えた今も、いったい何だったんだろうこの話は、と思う。
読後感は、全然湿っぽくなくって乾いた『アルジャーノンに花束を』といった感じだろうか、泣きはしないけれども感動はする。一人のテレパシストの魂の遍歴という部分もあるんだけれども、そういう個人の問題と、社会全体における様々な問題とをシームレスに結びつけて、そして感傷的にならずに冷静に描ききっているのだ。その点ではとにかく凄いとしかいいようがない。
いや、ちょっとこれはしばらくブラナーにはまりそうな感じだ。
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