- 著 森谷 明子
- 販売元/出版社 双葉社
- 発売日 2009-01-14
全く持って凄いというか、素養の無い身にとってはそう簡単には歯が立たないほど様々な要素が縦横に張り巡らされた小説だ。
長編ではなく、連作でもない、まあ中には登場人物が重なる話もあるけれども、基本的には別々の七つの短編なのだが、しかし、通して読み進めていくとやっぱり一つの繋がった糸のようなものが見えてくる。いや、一つと言ってしまったけれども、実際には一つではない。細く繊細な糸が全編を貫いているのだ。
そもそも、七夕の織女の七つの異名がそれぞれの短編の題名であり、最初の物語からして、密室で死体が発見されるというミステリでありながら、その密室を構成しているのが姫の使い神が作り出す白い糸なのである。無数の糸が張り巡らされた部屋で死体が発見される。
第一話は古代の時代、そして話が進むにつれ次第に時代が下り、最終話では江戸時代まで来る。そして、時代が変わっていくにつれ、語られる話も近代化され、徐々に幻想性も消えていくのだ。
よくもまあここまで様々な要素を盛り込んで、なおかつ破綻せず、書いたものである。
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