ベガーズ・イン・スペイン

ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)

  •  ナンシー クレス
  • 販売元/出版社 早川書房
  • 発売日 2009-03-31

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今度は<無眠人>シリーズかと思ったら、日本オリジナル短篇集だったのでちょっとがっかりしたけれども、<無眠人>シリーズを一気に三冊出したとしても売れる保証は無いのだから仕方ないのだろうなあ。とはいえど、オリジナル短篇集だけあって、収録作は粒より。
表題作は<無眠人>シリーズの第一作目、160ページほどのページ数の中で、遺伝子操作で睡眠を必要としない人類が誕生するという基本設定からさまざまな社会的変化を外挿しているところが凄い。ヴォクトの『スラン』やウィルマー・H・シラスの『アトムの子ら』、オラフ・ステープルドンの『オッド・ジョン』、レイモンド・F・ジョーンズの『超人集団』といった古くからある新人類ものではあるが、過去の名作に勝るとも劣らない。
で、「眠る犬」は<無民人>シリーズの番外編ともいう話だけれども、こちらもなかなかのものというか「ベガーズ・イン・スペイン」と続けて読むと、クレスの凄さがよくわかる話。
『プロバビリティ・ムーン』を読んだとき、「密告者」という短編が原型ということを解説で知って、この長編のどこを抜き取ったら短編として成り立つのか不思議に思っていたのだけれども、収録された「密告者」を読んで瓦解した。全然別物じゃないか。
一方で、こんな話も書くんだと思った「ケイシーの帝国」は……泣けるよなあ。
『90年代SF傑作選』にも収録された「ダンシング・オン・エア」はある意味、冒頭の「ベガーズ・イン・スペイン」と対極をなす作品。バレエと組み合わせたところがうまい。
こういう上質な短編集を読ませられると続きをもっと出して欲しくなるので、売れるといいなあ。

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