「ギロチン城」殺人事件

著　北山猛邦
販売元／出版社　講談社
発売日　2009-03-13

私が北山猛邦のこのシリーズに求めるのは物理トリックの大業ではなく、人体をどこまで単なる物として扱っているかという部分にあるので、ギロチン城における四人同時首はね密室殺人の謎などどうでもよくって、まあなんかとんでもない物理トリックというか仕掛けがギロチン城に仕掛けられていて、だからこんな芸当が出来るのだろうなという程度にしか思わないまま読んでいたわけである。
だから、種明かしが行われた時点でも、それほど驚かなかったかわりに、むしろ、よくぞそこまで作り込んだものだと感心するやら呆れかえってしまうやらだったのだが、それとは逆に、期待していた人体の物扱いの方はというと、登場人物の名前からして「一」「二」「三」「四」「五」と数字の名前がつけられていたり、登場人物の言動からして既に、人間というよりも単なる思考する機械に過ぎないというようなセリフが登場したりして、否が応でも期待感は高まる一方だった。
が、しかし、全編にわたってそのような雰囲気が漂っていると逆に麻痺してしまって、どうでもよくなってしまうというのは我が儘であることはわかっているけれども、やはりねえ、こういうのは最後にちょっとだけ顔を出すのがいいんだよなあと思うのであった。