- 著 佐々木 丸美
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2009-03-31
前作の『忘れな草』が強烈な佐々木丸美テイストだったのに比べると今回は若干おとなしめ。
とはいえども、主人公の迫害のされかたというのは前作に負けず劣らずで、本岡家に引き取られた主人公昭菜は本岡家の四姉妹と一緒に生活をするのだけれども、父母の愛情も受けず、学校にも行かせてもらえず、人目を忍んで独力で読み書きを学習するという凄まじさ。
唯一時折暖かいまなざしを向けてくれる叔父の存在だけが頼りという状況は、よくもまあここまでドラマスティックな設定を用意したものだと感心するばかりなのだが、佐々木丸美の世界はこれだけではない。
前作でもかいま見せた派閥争いと企業間のお家騒動といった部分は今回も密接に関連していて、登場人物の相関関係は複雑怪奇で図に起こしてみないとちょっとやそっとでは把握しきれない。
ミステリ度は薄いのだが、その変わりにあるのは複雑怪奇な人間模様というか登場人物達の濃厚な世界だ。『雪の断章』のあの人が登場していて、そしてさりげなく酷い目にあわせているのが凄いよ佐々木丸美さん。
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