- 著 マイク レズニック
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 2009-04-05
もの凄く久しぶりのレズニックだ。
<Widowmaker>シリーズか『サンティアゴ』の続編あたりが翻訳されるといいなあと思っていたので、今回はちょっと残念といえば残念でもあったけれども。
ミリタリSFというふれこみだったので、どちらかといえば一匹狼的な人物が主人公に多いレズニックとミリタリSFという組み合わせに不安はあったけれども、しかし、読んでみるとまあそんな不安など消し飛んでしまった。主人公が軍隊という組織のなかの一員であってもやっぱりレズニックなのだ。
規則は守るけれども、馬鹿馬鹿しい規則は守らないという、いつも通りのレズニックの主人公だったのである。
で、今回はシリアス系ではなくユーモア系の方で、そもそも主人公は人徳やら人望やらカリスマといったパラメータがMAX値の男なのだ。いろいろな人々に愛されて慕われて、仮に無一文の素っ裸で放りだされても一メートルも歩かないうちにオーダメードのスーツを着てポケットには小銭が入っていて、ディナーは予約済み、ひょっとしたら誰かが彼のために家を建てている最中かもしれないというくらいに、みんなが彼を手助けしてくれる。
そんなわけだからハラハラドキドキなんてさっぱりないのだけれども、どことなくキース・ローマーの作品群を思い出させるような懐かしい味わいだ。こういう小説こそ青背ではなく白背で出すべきなんだろうけれどもまあしょうがないか。
個人的にはもの凄く好きなんだけれども、正直なところ途中で飽きてくるのも確かだ、しかし、そこはレズニックである。無意味に話を長引かせず、要所要所でくすぐりを入れて、最後まで持たせてくれる。
そしてあっと驚いたラストだ。いや、正直言うとあっと驚くまではいかなかったけれども、でも疑問に思っていたことが氷解して納得した。なるほどねえ、やっぱりレズニックだ。
これじゃあ次巻を翻訳してくれなきゃ困るではないか。
コメント
あらすじを読んで気になっていました。
いろいろなブログを見ると評価が分かれるようで、
また購入するか悩んでいます(^^;)
レズニックって人は良くも悪くも職人で、アフリカ好きで、何を書いても寓話っぽい話になってしまって、それ故にたまに傑作になったりもするけれども、本質はB級作品量産作家だと思っています。
なので私はレズニックが好きなのですが、今回は寓話になる手前の部分までのお話なので続きが訳されないと面白くならないし、かといって続きが出るのかどうかもわからないので、傑作を期待している場合にはお薦めできませんねえ。