恋文の技術

恋文の技術

  •  森見 登美彦
  • 販売元/出版社 ポプラ社
  • 発売日 2009-03

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書簡小説ってのはそれほど珍しいものでもないけれども、全編とおして主人公側のみの書簡でそれ以外は何もなく、そして長編となると珍しい部類になるんじゃないかな。
何かしらのの事件やら時間の経過と共に変化していく出来事やらを書かなければいけないともなると、この形式だと不自然な部分も出てくるだろうけれども、そこはそれ、元々の作者の文体そのものが饒舌で少々の不自然ささえも吸収してしまえる文体なので、読んでいて全然違和感も不自然さも無い。
章立てされて、一つの章の中では特定の一人の人間宛の主人公の一方方向だけの手紙が記されているだけなのだが、この主人公、同時に複数の相手に対して文通ないし手紙のやりとりをしているので、章を隔てて読み進めるにあたって、少しずつ全体像が見えてきて、何が同時進行で起こっていたのかというものがわかる仕組みになっている。
パラレルな世界を並行的に描いた『四畳半神話体系』の変形版ともいえるかもしれないが、少しずつ全貌がみえていくさまはなかなかスリリングでもある。
そして何よりも素敵なのがこの書簡を通しての大きな物語の終結のつけ方で、一方的な手紙だけで大団円を予感させる手さばきが読んでいて心地よい。

コメント

  1. vol.5「恋文の技術」森見 登美彦

    恋文を書いたことがありますか?わたくし、実は、恥ずかしながらあるのです。…

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