- 著 山田 正紀
- 販売元/出版社 朝日新聞出版
- 発売日 2009-05-07
さて、三作目は誘拐事件だ。
前作とは直接の繋がりは無いけれども、主人公は前作の後遺症を引きずっていて、それが事件をややこしくしている。
生後間もない赤ん坊を誘拐というのは犯人側にとっては、人質を帰すということを前提としていた場合、けっこうリスクが高いと思うのだけれども、まあそのあたりは真相が分かれば納得できる設定にはなっている。
逆に言えば、そういう部分を考えていくと、というか途中で明らかになる事実を見ていくと真犯人が誰なのか分かってしまうあたりが残念とも言えるけれども、犯人探しよりも、誘拐事件に挿入されたアイデアを楽しむべきものなのだろう。
電話の逆探知を防ぐために犯人が用いた方法や、赤ん坊を人質にしたことによる誤認など、もったいないくらいに沢山のアイデアを投入してしまっている。
あまりにも巧妙過ぎるために完全犯罪に近く、それ故にラストでの犯人との対決で、作者は主人公に前作以上に辛い試練を与えているのだ。
うーむ、次の巻ではいったい主人公はどうなってしまっているのだろう。
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