- 著 フレドリック・ブラウン
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 1965
フレドリック・ブラウンのミステリといえば東京創元社で、早川書房はSFだけしか出していないという印象があるのだけれども、実際のところはポケミスで一冊だけ、ブラウンのミステリが出ているのである。
1700冊を越えるポケミスの中で一冊だけなので埋没されて注目されなかったという気もするけれども、実際に読んでみると、まあ確かに忘れ去られてしまっても仕方ないかなあという気もする。
主人公は不動産業を営んでいたけれども、妻との折り合いが悪く、離婚したいくらいなのだけれども、子供がいて、愛する子供たちのためには離婚するわけにも行かず、別居したいけれども、別居できるほどの稼ぎが無く、一生懸命仕事にせいをだした結果ノイローゼになってしまい、医者からしばらくの間別の土地へいって仕事のことも忘れて療養したほうがいいと言われてしまう。
そうしてやって来た街では、八年前にある若い女性が婚約者に殺されるという事件が起こっており、犯人は行方不明のまま。雑誌の記者をしている友人から、この事件に関して調べて記事にしてくれれば自分の名前で出版し、原稿料は折半という提案を受け殺された女性が住んでいた家を借り、調査に乗り出す。
チェスタトンの「ブラウン神父」は、犯人になりきったつもりで事件の真相を考えるのだが、この主人公も事件の真相を追ううちに同じような思考をするようになる。そのおかげで事件の真相が見え、ほぼ、事件の真相を暴き出してしまう。
しかし、ブラウン神父は人格者であるのに対して、主人公はノイローゼ気味のごく普通の一般人だ。
そのあたりが人生の分かれ目というか、幸と不幸の境目で、アンハッピーな結果になってしまうんだよなあ。
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