- 著 伊井 直行
- 販売元/出版社 朝日新聞社
- 発売日 1995-07
中学生の頃、クイーンの『Yの悲劇』を布団の中で読んで、読み終えた後興奮して眠ることが出来なかったことがあった。
大人になると面白い本を読んでも冷静に対処できるようになったというか、悪くいえば感受性が鈍くなったせいか、興奮して眠ることができないということはほとんどなくなったけれども、そのかわりに物語が頭の中をかけずり回って他の本が読めない状態になることはたまにある。
小説ではないけれども、映画の『ミリオンダラー・ベイビー』を視たら、物語が居着いてしまって小説の方も読まなければいけないはめになってしまった。
そして今回、伊井直行の『ポケットの中のレワニワ』を読み終えたとき、その愛らしい結末に打ちのめされてしまい、他の本を読む気がおきなくなってしまったのだ。
しかし、さいわいなことに伊井直行の『ジャンナ』を入手してあったので助かった。
で、読んでみると、やっぱり伊井直行は法螺吹きおじさんなのだなあと実感した。冒頭で、猫が人語を話す小説は読みたくないと主人公の友人が語り、そして作家でもある主人公も、同意見だと返答する。そして、その後で猫が人語を話すのである。
厚顔無恥というかまあ法螺吹きである以上仕方ないのだけれども、『ポケットの中のレワニワ』の後で読むにはちょうどいい話だった。
おかげでようやく他の本を読む気力を取り戻せたのである。
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