経過報告39

10/13

今日は妻の面会。
病棟に入って病室へと向かうとちょうど妻がトイレから出てきたところだった。
一緒に病室へと入り、持ってきた差し入れを妻に手渡す。
パンとジャスミン茶は喜んでくれたので良かった。
妻の様態は平行線といったところか。時折、「あなたのせいよ」と私を非難するが、これもまた致し方ない。
同じ病室の患者さんに、妻が夜、眠る前に飲んでいる黄色い薬に関して良からぬ事をふきこまれたらしく、これは強い薬で、副作用で白血病になると思いこんでいる。
私が調べた範囲で副作用で白血病になるような薬は妻は飲んでいない。
そのことを話すのだが、闇ルートで仕入れてくる薬だから調べてもわからないなどと妄想じみた、いや妄想を言う。まったくもって困った問題だ。少なくとも入院すれば、妄想をふくらますようなことは無いだろうと思っていたのだが、以前、妻が、ここにいると廃人にされてしまうと叫んだのと同じように、薬に関して妄想を抱いたままの患者さんがいるのだ。
それに比べると、看護師さんは妻に、今の症状は薬が抑えている状態だから退院してもしばらくは薬を飲み続けないといけないと言ってくれているのでありがたい。問題は妻がそれを正しく認識してくれているのだろうかということなのだが。
「声が聞こえるというだけで私は入院させられてしまった」と妻が言う。
「二十四時間、起きているあいだずっと声が聞こえるってのは重要な問題だっただろう」と私が言うと、妻は少し考え込んでしまったようだ。
どうなんだろうかと思っていると看護師さんが妻の名前を呼んだ。主治医との面談の時間だったらしい。
私が帰る準備をしていると、妻が私も一緒に面談するか聞いてきたので、主治医の先生に尋ねると、同席の許可が得られたので私も同席する。面談を申し込もうとしていた矢先なので一石二鳥だった。
妻曰わく、先生は早口なのだそうが、今回は確かに早口だった。
副作用らしい症状が無いかどうか尋ね、今週は心理テストと作業療法をはじめてみましょうと言う。
そして私に対して、ちょっと表情が出てきましたと言ってきた。
うーん、先生からみればちょっとなのか、妻の表情は。
私に対してとそれ以外の人に対してとで表情の出し方が違うのは確かにそうかもしれない。
私以外の人に対して表情が出せなければいけないのだろう。
「そろそろ外泊してみますか」と先生が言ってくる。
いきなり外泊は負担がかかるということで、今週の土曜日は外出、そして次は外泊ということになる。
順調にいけば外泊を利用して妻はコンサートに行くことが出来る。
「ご主人さんから何かありますか」と聞かれたので、妻が寝る前に飲んでいる黄色い錠剤について尋ねる。先生の回答は予想していたとおり、ジプレキサザイディス錠で、10mgと5mgの二錠だった。白血病の副作用があると吹き込まれた件については黙ったままにしておく。
別れ際に妻は安心したといったので、何に対して安心したのかはわからないが、とりあえずは良しとしよう。

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