経過報告46

10/20

妻の退院日が決まった。
当初の予定より一週間ほど延びたのだが、だいたい想定の範囲内だったし、治療に関しては今のところ何も問題は発生していない。
妄想はまだ抜けきれてはいないが、もともとそういう傾向にあったわけだし、再発に繋がらなければ私としては問題はないことであるし、もっとも妄想は無ければ無いにこしたことはないが、ゆっくりと無くなっていくように努力してみるしかない。
病識に関しては芽生えてきたようで、薬の服用に関してもそれが大切であることを口に出して言うようになった。本心からなのかはわからないが、今のところは妻の言葉を信じるしかない。
妻と会話をしているときに、新しく入ってきた研修医さんの挨拶が始まった。
妻は、研修医を受け入れるなんて凄いところねとよくわからない理由で感心する。
妻の論理によれば、研修医を受け入れるところはしっかりとしたところらしいのだ。
なんにせよ今の病院に対する好感度が上がったようなので、まあ良いとするか。
退院日が決まったにもかかわらず、妻は、自分が本当に退院できるのか不安がっている。
薬が変わったのもその理由の一つらしいのだが、あいにくと私もその薬の名前はまだ聞いていない。しかし、ここで心配させても仕方がない。前の薬の効力について話す。
「脅迫観念なんかを押さえる薬だよ」
「脅迫観念って?」
「誰かに悪口を言われているような感覚だよ」
「ああ、そういえばそんな感覚に襲われると首の後ろのあたりがピリピリしていたわ。だから最近はそんな感じがしなくなったのね」
正しい説明ではないのだが、とりあえずは薬の効果に関して納得してくれたようだ。
今は、正確に伝えなくってもいい。闇雲に薬を怖がる必要はないことを理解して貰うことが大切なのだと思う。
が、妻の方は順調であるのに対して私の方はあまり具合が良くない。
ここのところ、母と弟からの電話は全て無視している。
話をしたくないのだ。
ある意味引きこもり状態にも等しいのだが、身内に対してだけであってそれ以外の人に対しては普通に会話をしている。
ようするに、身内だと深くつっこんだ部分に関して会話をしなければいけなくって、それが面倒なのだ。
身内の助けがほとんど期待できない状況下で、一人がむしゃらに走り続けてきて、精神的にかなり疲れてしまったようだ。

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