漫画篇 その2

まどの一哉の『洞窟ゲーム』がわたしにとっての今年のベスト1とすると、ベスト2は、吉田秋生の『海街diary 三巻』になる。
もはや名人芸とでも言うべきか、品質においては何も不安要素がなく安心して読むことができ、なおかつこちらの期待以上のものを見せてくれる。
こういう漫画はわざわざベストに選ぶ必要もないのだが、三巻に関してはちょっと特別だった。
主人公一家の長女は同じ職場の医師と恋愛関係にある。しかし、相手の医師には妻がいて、不倫関係なのだ。そして、医師の妻は心の病である。
三巻の中で流れる物語の中で、医師は妻と離婚をし、自分の目標を目指してアメリカへと旅立つ。しかし、長女は医師と一緒にアメリカへと行く道は選ばなかった。
多分、普通の人から見れば、長女の相手の医師はとんでもない奴だと思うだろう。
しかし、私は医師のことをとんでもない奴だと思うことができない。漫画の中では描かれなかった医師の苦悩がよくわかるからだ。
わたしは医師と同じ方法を選ぶことはないだろう。でも、だからといって医師の選んだ道が間違っているとはいうことができない。
夫婦の絆というものは、いとも簡単に切ってしまうことができる。
紙一枚で済むのだ。
一枚の紙でつなぎ止められた絆では必ずしも人の苦しみは救うことはできない。残念ながら。
漫画の中の、その描かれていない世界の部分に考えさせられてしまった。

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