去年の振り返りはこれでお終い。
最後はノンフィクションである。
『代替医療のトリック』サイモン・シン
『高砂コンビニ奮闘記』森雅裕
『フェルマーの最終定理』『暗号解読』のサイモン・シンの新作。さすがに一人では難しい問題があったのか、今回は共作者がいる。もちろん共作者がいるからといって今までどおりのサイモン・シンの作品となんら変わりもない。あくまで海外における代替医療なので日本における代替医療とは少し異なる部分があり、それゆえにもどかしさを感じてしまう部分もあるのだが、代替医療が実際に効果があるのかないのかという点を中心としてその論点がぶれずに突き進んでいく様は読んでいてすがすがしさを感じる。ただし、効果が無い代替医療が世間にはびこっているという事実を目の前にして、自分はどうすればいいのだろうかという問題を突きつけられてしまう点が厄介なところだ。
『高砂コンビニ奮闘記』は、作家としての実力はありながらも、出版社や自分を助けてくれる人たちと衝突せざるを得ない生き方しかできないように見える森雅裕のノンフィクション。いつも利用していながら、今まで知ろうともしなかったコンビニバイトの裏側がぎっしり書かれている。著者の現在の情況を考えると笑っていられるような情況ではないのにも関わらず、読んでいて暗い気分に落ち込みそうになるような内容にはけっしてならず、時に笑え、時に考えさせられ、時にしんみりする。森雅裕は書き続けることができるかぎりあくまで作家であり続けているのだ。
『塵もつもれば星となる 追憶の柴野拓美』
わたしにとってのSFの父は福島正実なのだが、ファン活動というものをしていたらそれが柴野拓美に変わっていたのかもしれない。この本は、去年亡くなられた柴野拓美氏を偲ぶ会の実行委員会によって編集された追悼冊子。偲ぶ会に参加した人に対して配布された物で、一般書店で流通されたものではないのだが、通販で購入することができたので購入した。その前年、アンド・ナウの会というサークルが出した同人誌『僕らを育てたSFのすごい人』を買った時には、当たり前のことだが、まさか翌年に亡くなられるとは想像すらしなかった。
さらには田中光二氏が闘病中であることに驚いた。ウェルズの『宇宙戦争』の続編の構想があるらしいのだが、出版の依頼は無いらしい。田中光二による『宇宙戦争』は読んでみたい。
非虚構の話篇

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