わたしが伊井直行の存在を知った時には伊井直行の著書の大半は絶版だった。
だから、少しずつ古書を探して絶版となってしまっている本を読みつつあるところで、残りあと六冊。
多作ではないので一度に集めて読み切ってしまわないように、慌てず、ゆっくりと探すのがちょうどいい感じだ。
で、この本は伊井直行の初短編集である。
以前、伊井直行はR・A・ラファティなんじゃないかと書いたことがあるけれども、やはり伊井直行は最初から法螺吹きおじさんだったことを実感した。いやむしろラファティよりもたちが悪いかもしれない。収録された短編は、単純に発表年順に並べられているにすぎないのだけれども、最後に「材木座海岸」なんて作品を置いておくからだ。最初の話から順番に読んできて、最後の話はどんな嘘をついてくれるのだろうかと期待して読むと、見事に裏切られる。もちろん、良い意味でだ。
いや、なんなんだろうねえ、作家としての懐の広さというべきか、それとも力量というべきか。
もっと評価されてもいいのではないかとも思うのだけれども、今のままでいて欲しいという気持ちもある。
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