『脱出山脈』トマス・W・ヤング

デズモンド・バグリィと比べてはいけないと理解していたとはいえ、ちょっと期待しすぎたか。
政治色が強すぎたのがやはり難点で、もっともアメリカ人からすれば、いや、自国がテロのターゲットとされている状況下で、そのテロ組織に対して理解し合うといったコミュニケーションをしろというのは酷かもしれないだろうけれども、敵は無条件に殲滅しなければいけない存在であるという事項がゆるぎない前提として存在しているのはちょっと話についていけない。そんなものよりも自分の仲間が殺されたから戦うというほうが主人公に共感できる。
なので、主人公よりも通訳の女性軍曹の方が私にとっては魅力的で、彼女の方を主人公にすればどれほど面白くなっていたかと思うと少し残念だ。
敵側に魅力が乏しいのも残念な点で、強敵ではあるけれども、主人公を窮地に陥らせる為だけに存在しているだけで、敵側に共感する余地すらない。コミュニケーションの必要ない存在である以上、こうなってしまうのも仕方がない。
それに比べると主人公を苦しめる雪と寒冷はうまく描かれているので、過剰に期待をしなければ面白い話ではあったと思う。

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