『カミングアウト』高殿円

ライトノベルというのは難しい。
毎月数十冊も出て、大半はお気軽な娯楽小説であるのに、ごくたまにとてつもなく面白い小説が出てきたりする。
そのごくたまに出るとてつもなく面白い小説を探し出すためには数十冊の本をチェックしなければいけないから大変だ。
高殿円も名前だけ知ってはいたが、早川書房から『トッカン』が出るまではノーチェックな作家だった。無論、ライトノベルのレーベル以外から本が出たからといって必ずしも面白いというわけではないが、題材からしてちょっとチェックをしてもいいかもしれないという気持ちにさせられた。
とはいうもののいきなり四六版を買うのも抵抗がある。
しかしあれこれ思案しているところでタイミング良く『カミングアウト』が文庫化されて出た。
で、
「心に秘めた欲望・願望をカミングアウトするとき、人は、周囲は、どう変わるのか?ストレス解消、すっきりエンタメ。」
という内容に、嘘はないだろうと思い読んでみることにした。
……とりあえず、スッキリする内容だと思って読んでみたら、第一章がとんでもなく重苦しい内容だった。この話のどこがスッキリするのだろうか。
続けて第二章を読むのだが、第二章では主人公が変わる。第二章は第一章に比べればはるかに明るい悩みの話だったが、第一章の行方は気になったままだ。もやもやしながら第三章を読むと、少し重苦しい悩みを抱えた主婦の話になる。最後は家庭崩壊寸前で終わる。
いったいこの話、いや登場人物達に幸せが訪れるのだろうかと不安に思いながら最終章にたどり着くと、嘘偽りなくスッキリとしたストレス解消的なところに着地したので驚いた。まあ、多少はご都合主義的な部分もあって、これが現実だったらそんなに甘くはないと言ってひがんでみせることもできるけど、現実だってご都合主義的にうまく行くことだってある。いろいろとあれこれあって、満足いく場所に落ち着くとは限らないけれども、現実と理想のギャップに悩まされて、妥協するわけではないけれどもなんとか満足できるスキマを見つけだしてそこに落ち着くことができたらそれは幸せなことなのだ。

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