ミステリーから遠ざかっていたので宝島社の『このミステリーがすごい!』大賞にもあまり興味を持つことがなかった。
『四日間の奇蹟』とか『チーム・バチスタの栄光』とか、読んでみてもいいかなという気持ちが全くなかったわけでもないけれども、結局読まずに来ていた。
が、ここ最近、ミステリーに興味が出るようになったせいと「ライバルはマイケル・スレイドかよ!」という選評に惹かれて中山七里の『連続殺人鬼 カエル男』を手に取ることにした。中山七里は先月、『さよならドビュッシー』が文庫で出ていて、その時にも少し興味を持っていたので『連続殺人鬼 カエル男』は面白いに違いないという感が働いたのかもしれない。
しかし、さすがに刑法39条の問題というのは今の自分には少し堪える問題だ。心神喪失者の不処罰という問題は、被害者の立場に立ってみればやるせない、憤りとを感じる問題であることは理解出来る。わたし自身も心神喪失者であっても違法行為を行ったのであれば処罰は受けるべきではないかと考える。しかし、しかしだ、現実問題として大切な家族が加害者となった時、自分はどう行動するのだろうかと考えると、多分わたしは苦しむだろう。
単純に心神喪失といっても様々なレベルがある。防衛本能から暴れてしまう場合もある。その場合、自分に被害が及ぶからそれを防ぐ為に暴れるのだ。実際に被害が及んでいれば正当防衛にもなるが、幻覚に過ぎない場合は正当防衛ではない。しかし、当人にとってはそれは幻覚ではなく実際に起こった事実としか受け止めることが出来ないのだ。当人にとっては正当防衛なのである。
他人で有れば冷酷に事実を突きつけることはできる、しかし他人じゃなかった場合、冷酷に事実を突きつけることができるかといえば、それは苦しみと伴う。
話を元に戻そう。そもそも娯楽小説なのだからそこまで考える必要もない。
さすがにマイケル・スレイドの領域までは行かないものの、マイケル・スレイドの場合は読者を驚かせるためには卑怯な反則行為ですら平気で行うけれど中山七里はそこまで下品ではない、主人公の刑事に対する試練というか仕打ちはなかなかえぐい。シリーズ化というのはちょっと期待できないが、職人的な作者らしいので次作も驚かせてくれるだろう。
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