『SF文学』ジャック ボドゥ

フランスという国ではSFというジャンルはどうなんだろう。ジョージ・ウェルズと共にSFの父とも呼ばれるジュール・ヴェルヌはフランス人だし、ジャック・サドゥールの『現代SFの歴史』が翻訳されたり、ボリス・ヴィアンはヴァン・ヴォクトのフランス語翻訳を行っていたり、ヴァン・ヴォクトの<非Aシリーズ>の第三作はフランスで出版されたり、SFばかり描いているわけじゃないけどメビウスは世界的にも有名だし、ジャック・サドゥールの『現代SFの歴史』だけを見る限りでもSFというジャンルは重要なジャンルのひとつのようにも見える。
せっかく翻訳されたので難癖をつけたくはないが、新書サイズなのでボリューム的にはあまり満足出来ない。『現代SFの歴史』のあの読み甲斐のあるボリュームと比較してしまうのだ。では入門書としてはどうなんだろう。本文中では未訳の本も既約の本も区別が無く、巻末の索引をあたるしかないのがちょっと手間だし、既訳の本に関しては出版社情報が載っていないのも残念だ。ネット時代だからネットで調べればいいのだけれどもね。
しかし、フランスの人が書いたせいか、採り上げられている小説の未訳率は驚くほど高い。そういう点ではフランス人視点のSFという本書はそれ自体がセンスオブワンダーを持っていて、読みながら、どうしてこの小説が採り上げられているのだろうかと興味をそそられるので読んでみたくなるのだが、未訳なんだよねえとがっかりしてしまう。
サンリオがSFから撤退していなかったらもう少し情況が変わっていたかも知れないなあと、ふと思った。

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