わたしが莫言を知ったのは『四十一炮』が翻訳されたときだからそれほど昔のことではない。
しかし、見知らぬ作家の上下巻の四六判の本をいきなり買うのは躊躇してしまったわけで、かといって手軽に読むことが出来そうなの莫言の他の本も無く、文庫化されるまで待ってみようと思い、ひたすら待ち続けていたら結局、去年の九月に『白檀の刑』が文庫化されるまで待ってしまうこととなった。
で、『白檀の刑』を読んでみると、そのパワフルさに圧倒され、読むのが楽しみな作家が増えたことを喜んだのだが、同時に、気軽に読むには少しやっかいな作家でもある。
今回は短編集ということで気軽に読むことが出来るかなと思ったのだが、短編集というか中編二編だったので、なかなかやっかいだった。
短い話であるとはいえ、パワフルで面白くてそして悲しい。三国志などでかなり昔の中国のことは知っていてもちょっと昔の中国のことは何も知らない。特に農村部のことなど何も知らないに等しい。
悪人こそ登場しないが、どこかジム・トンプスンなどのノワールに通じる部分があるような気がする。「築路」において登場人物達がひたすら破滅への道のりまっしぐらの展開を読んでそう思った。
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