『蒼林堂古書店へようこそ』が比較的ミステリ度の低い話だったので、今回も同レベルのものなのかと思っていたら全然違った。
金持ちの道楽的な形で探偵事務所が開かれ、利益を出すことは主眼におかれていないので、持ち込まれる事件や相談にたいして取捨選択ができる。
必然的に、謎解き専門になるし、ミステリ度も上がる。
で、どんな謎が持ち込まれるのかというと、これがマニアックというか、変態的というか、乾くるみにしか作り出せそうもない謎だ。
ジョン・ディクスン・カーといえば密室、まあ実際は密室トリックよりも別のトリックの方が多かったという話も耳にしたことがあるが、それはともかくとして乾くるみというば暗号だ。
現実の世界では暗号といえば公開鍵暗号が主流であり、人力で解くことなど不可能な世界で、夢も浪漫もへったくれもないのだが、乾くるみはそんなことなどお構いなしにせっせと暗号を作り続ける。
まあ、結果として、こんな暗号だれが解くことができるのだと思うくらいに偏執的なほど複雑なものになっているが、乾くるみだから許せるという面もある。
暗号に関しては職人的ともいえるが、解説で種明かしされる「三本の矢」に仕掛けられた遊びの部分をみると、泡坂妻夫が持っていた遊び心の部分を継承しているのは乾くるみではないかと思った。
『カラット探偵事務所の事件簿1』乾くるみ

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