『妖異金瓶梅』山田風太郎

わたしが山田風太郎という作家を知ったのは、忍法帖ブームの時だった。当時は忍法帖などには全く興味がなかったので、山田風太郎の小説を読むようになったのはそれからさらに後の話だ。
ちょうどちくま文庫から明治物が出たあたり、『ラスプーチンが来た』を、何かのガイドブックで面白いということを知り、読んだのが最初だ。とはいうもののそれほど夢中になったわけでもない。たまに思い出したかのように少しずつ読むということを繰り返してきた。
それにしても山田風太郎という人は不思議だ。ときおり何処かの出版社からまとめて本が出る。今も、角川文庫から何冊かまとまって出ている。
初期のミステリ、忍法帖、後期の明治物、それ以外にもいろいろあるのだがこうして振り返ってみると出すもの大半は新たなジャンルを形成していて、山田風太郎はいつでもそこに存在しないものを生み出してきた。『妖異金瓶梅』もその一つだ。
この本で山田風太郎はレギュラー探偵ならぬレギュラー犯人を作り出した。ネタバレになってしまうが、このくらい構わないだろう。
しかし、シャーロック・ホームズにもモリアーティ教授というレギュラー犯人がいたし、ロード・ダンセイニの「二壜のソース」に始まる一連のシリーズも同じだったから必ずしも珍しいものではないが、それでも、全十五編の連作短編に仕上げる手腕はすばらしい。
さすがに中盤を過ぎると展開が同じパターンに見えてきて飽きてくるきらいもあるけれど、そこを見計らってか山田風太郎は一気に物語を転調させて歴史大河へと持っていってしまう。そして山田風太郎が用意した最終話は物悲しく幕を閉じる。

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