普通ならばこちらの方を先に読むのだろうけれど、こちらの方はアンテナにひっかからずに『連続殺人鬼 カエル男』の方がアンテナにひっかかって先の読んでしまったので、後からこちらを読むことになった。
『連続殺人鬼 カエル男』とはタイプの異なる話であることは理解していたので変な期待はすることはなかったけれど、やはり根底は同じなのだなと思った。作者の視点が同じなのだ。
大やけどを負いながらも九死に一生を得た少女がピアノを弾くことを決意し、さまざまな試練を乗り越えてコンクールへの出場を目指すという物語はミステリの部分が無くてもそれだけで十分に面白い。
読み手の共感を得やすいように描かれているというのもそうだけれど、序盤における主人公の祖父の言葉や、主人公のピアノの先生の言葉が読み手を勇気づけさせるからだ。
音楽の演奏シーンも文字で表現するということを考えると平易でわかりやすく、すんなりと演奏シーンを頭の中に描くことができる。
こういうミステリは犯人が誰だとか、トリックがどうのだとか考えずに、純粋に物語として楽しんで、そして騙されてあっと驚くというのが一番いい。
ただ、欲を言えばあまりにもそつなく綺麗にまとまっていて破綻が無いのが残念だが、この作者にはそれを求めるのは無茶なことだろう。
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