わたしにとってのラファティは「笑い」の作家であって、それ以外の部分というのは受け入れるだけの素養が無い。
しかしラファティは史上最高のSF作家と言われるだけあって彼の作品は「笑い」だけではない。「笑い」は彼のごく一部でしかない。
今回の短編集はそんなラファティの「笑い」以外の部分がめいっぱい出た作品集だったので、どうにもこうにも楽しめなかった。
例えていうならば、ボクシングの試合でこれは勝てると思った相手と対戦したはずなのに、対戦相手が見えないところから次々とパンチを繰り出してきて為す術もなくダウンさせられてしまったという感じか。
そもそも冒頭の「だれかがくれた翼の贈りもの」からしてなんだかもの凄くいい話なのだ。そこで語られる突然変異の進化の論理はラファティのつものごとくの論理なのだけれども、そういった部分をはぎ取ってしまうと根底に残るのはなんともいえない親子の切ない話になる。
そんな感じで法螺吹きおじさんの愉快な話を期待しているとなんだか全然違って、ある意味それは自分の未熟さを映し出す鏡のようでもあり、読んでいて少し辛くなった。
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