『ムーミンパパの思い出』トーベ・ヤンソン

最初の文庫化では六冊目として出版されたのだが、本国では三冊目として出版されているので、今回の新装版では本国と同じ順番で出版されたこととなる。
時系列的には『たのしいムーミン一家』の後の話となるはずだが、今回はムーミントロールがうんと小さな頃の話となっている。なので『ムーミン谷の彗星』よりも前の話ということになるはずなのだが、その設定が正しいとなるとスナフキンがムーミントロール達と一緒にいるのが不思議だ。
まあそんな些細なことは気にしないようにしておこう。
さて今回は、ムーミンパパの若い頃、ムーミンママと出合うまでの事をムーミンパパが本として書いてそれを子供たちに語るという話なのだが、ムーミンパパが捨て子だったというのがなかなか衝撃的だ。ムーミンパパはムーミントロールのパパだからムーミンパパと呼ばれているのだが、そのムーミンパパのパパはなんと呼ばれていたのかという疑問は、ムーミンパパが捨て子なので受付させない設定だ。ムーミン一家はムーミンパパから始まるのである。
衝撃的な事実というのはそれだけではない。スニフの父親やスナフキンの父親が登場し、そしてムーミンパパは彼らとともに冒険をする。ムーミンの世界でも親の世代が子の世代にも受け継がれているのだ。
スナフキンとミイが異父兄姉だったというあたりは、もはや何でもありの世界でもあるのだが、孤児だったムーミンパパが孤児院を脱走し、発明家のフレデリクソンと出会い、冒険家を目指して行き当たりばったりの冒険をし、そして親友ともいえるフレデリクソンと別れることで自分の将来を悩むという過程は考えれば考えるほど奥が深い。翻訳者があとがきで、何度も読むことをオススメする理由がよくわかる。確かにこれは子供向けの単純な話ではないのだ。
もっとも、深読みすればのはなしだが。

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