『プラスチック・ラブ』樋口有介

シリーズキャラクターの柚木草平がちょっとだけ出る短編集だ。
数年前から未読のフレドリック・ブラウンのミステリを探し出しては少しずつ読んでいる。
東京創元社から出ていたミステリが主体だが、フレドリック・ブラウンのミステリをまだ新刊で買うことができた時代にそれなりに読んだけれども、それでもけっこうな数が未読のままだったのだ。
わりとこまめに探しては読んでいるので、読んだのか読んでないのか記憶が怪しい作品も含めてそろそろ終わりが見えてきているのだが、既読の作品もどんな内容だったのかあやふやになってしまっており、この際だから既読のものも全部読み直してやろうかと思ったりもしているので終わりがちょっと遠のいてしまっている。
樋口有介の『夢の終わりとそのつづき』が東京創元社で文庫化されたときはまだ樋口有介の作品は読んだことがなかったが、その時は何故かその本を手にとり解説を読んみた。そしてこの本がフレドリック・ブラウンの『死にいたる火星人の扉』に触発された部分があるということを作者が書いていた。
『死にいたる火星人の扉』は既読だったが、どんな内容だったのか覚えていない。なので、樋口有介の『夢の終わりとそのつづき』に興味を持ったが、その時は買わなかった。しかし『死にいたる火星人の扉』も『夢の終わりとそのつづき』もずっとわたしの頭の片隅に居座り続けていた。
いつのまにか樋口有介の作品も読むようになり、『死にいたる火星人の扉』も読み、『夢の終わりとそのつづき』も読んだ。
樋口有介の作品はまだ未読が多いが、あせらず、気が向いたときに読むようにしている。『プラスチック・ラブ』も気が向いたので読んだ。
作者があとがきで、短編は苦手だと書いているが、なかなかどうしてこれが面白い。
「短編は人生の一部を切り取ったものだ」というような文章を読んだことがあるが、この短編集はまさにそのとおり。一部を切り取っただけなので起承転結らしいものが無い話もある。
普通に読めば、多分失敗作とか、やはりこの作者は短編が下手だと思うかも知れないが、一部を切り取ったものだと思うと、この切り取り方が実にうまい。というか会話がうまいよねえ。なんだか懐かしい気持ちにさせられる。
で、この懐かしさはなんだろうかと考えてみて、この会話の雰囲気というのが、たがみよしひさの会話と同じだということに気が付いた。たがみよしひさの会話の方がちょっと大人びているが、この会話の味わいは昔懐かしい、たがみよしひさの漫画を読んだときと同じ味わいだったのだ。

コメント

  1. 探偵0810 より:

    偶然…
    三日の日、図書館に予約していた…
    樋口有介
    『刑事さん、さよなら』を借りて来たら…
    同じ様に取り上げられていました
    o(^-^)o
    樋口有介は、僕の中では…
    外さない作家の一人です
    (^_^)v
    何かのエッセーで、当分の間は書かないと宣言したのが気になります。
    うつの前は週二冊ペースで読んでましたが…
    今では波はありますが、3~4月に一冊ペース…
    未読本が二百冊近く溜まってます
    いつも、貴重な情報をありがとう
    (*‘‐^)-

  2. Takeman より:

    探偵0810さん、はじめまして。
    >同じ様に取り上げられていました
    なるほど、そうなんですか。
    >未読本が二百冊近く溜まってます
    わたしも、そのくらいは溜まっています。
    なんとかしないといけないと思っているんですが、こればかりはうまくいきません。

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