まさか講談社ノベルズで城平京の新作を読むことができるとは思わなかった。
『名探偵に薔薇を』で長編デビューしたものの、それ以降は漫画原作者として活躍し、その漫画の小説化はするものの、漫画にかかわらない作品は発表していなかったのでこのまま行ってしまうのだろうと思っていた。
それはともかくとして、ミステリというのはどんどんと複雑化、細分化していると思う。
例えば、倉知淳の<猫丸先輩>シリーズでは『猫丸先輩の推測』でありそこで行われる推理はあくまで納得のいく解釈のできる推測でしかない。論理的な矛盾がなければ正解である必要がないのである。
乾くるみの『カラット探偵事務所の事件簿』においては真相を明らかにすることと、事件を解決することは違うとし、あくまで事件を解決することにこだわる。
で、城平京の『虚構推理』では何が行われるのかといえば、真相を明らかにすることでは事件を解決する事が不可能な情況に追い込まれるので、合理的な嘘を構築しそれによって事件を解決しようとするのだ。
そしてその嘘を補強する手段として、「くだん」が登場する。必ず当たる予言をして死ぬ、あの「くだん」である。そこには、なぜ「くだん」の予言は必ず当たるのかという点についてある解釈がなされ、その結果、嘘が補強される。津原泰水の「五色の舟」と似たような解釈だがなかなか面白い。
事件は解決するのだが、真犯人は捕まえることができないまま物語は幕を閉じるので続編は書けそうなのだが、はたしてどうなのだろう。
「くだん」に頼むか。
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