突然、幽霊が見えるようになってしまい、しかもその幽霊は未練を果たすために自分にたいして頼み事をしてくる。幽霊に消えてもらうためには幽霊の頼み事をかなえてあげなくてはならない。なので仕方なくその幽霊の願いを叶えるために奔走するという話をほろりとさせる人情話に仕立て上げたのが一色まことの『花田少年史』なのだが、スチュアート・ネヴィルの『ベルファストの12人の亡霊』の場合はちょっと異なる。
主人公は元テロリストで、主人公につきまとう12人の亡霊は主人公が殺した人達だ。彼らが主人公に頼むのは人殺し。しかもその相手は主人公に関わり合いのある人物ばかり。
一見するとキワモノのような話にも見えるけれども、一色まことの『花田少年史』が許容できるのであればこっちも許容できる。去年、こんな話が翻訳されていたとはつゆ知らず、もう少し海外のミステリにも注意しておかなければいけないなと思ったりもするのだが、そうすると今度は本が読み切れなくなってしまうというジレンマが発生する。
まあそんなことはともかくとして、北アイルランドの政治問題を中核にして『花田少年史』の人情話が甘ったるい話に見えてしまうほどの重みを持った話にしてしまう手腕はこれが処女作とは思えないほどだ。
次に亡霊が指さす相手は誰なのか、その相手が殺されなければいけない理由はなんなのか、最後の願いを叶えたとき何が起こるのか。サスペンスと謎への訴求力はページをめくる手を止めさせない。ラストの処理が若干甘ったるくなってしまって好みではないけれども、続編があるという。翻訳されるといいな。
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