両親の離婚問題で二週間ほど祖父の元で生活することになった三兄妹がその町で体験するダークファンタジー。
一言でいえば天沢退二郎の『光車よ、まわれ』と同じ味わいの小説だ。冒頭に町の地図があるのも嬉しい、それも手書きの地図だ。というかこの手の物語には町の地図は必須だ。
水たまりに映る謎の女。相次ぐ少女の行方不明事件。川底に沈んだ車の中から見つかった少女の死体。60年前に書かれた少女の手記とその中で起こった連続行方不明事件。そして武闘派少女ペア。
主人公達のおじいさんがなかなかいいキャラクターなのにあまり活躍しなかったり、三兄妹のうち末っ子はほとんど物語に絡まなかったりするのが少し残念。登場人物全員に何らかの見せ場を用意して欲しかったなあと思ってしまうくらいに魅力的な人物が多い。
登場人物も魅力的ならば物語の雰囲気も魅力的であり、特に中盤過ぎに登場する映画のシーンはゾクゾクさせられる。鈴木光司の『リング』を思い出してしまった。
そして、様々な謎が合理的に解決されるのか、それとも曖昧なまま残されるのか、ファンタジーとして終わるのかそれとも現実的な物語として終わるのか、その度合いは振り子の針のように行ったり来たりを繰り返しながら作者が用意した結末へと向かう。
久しぶりにこの手の物語を堪能した。
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