江戸という時代が終わり、明治に切り替わって、それから二十年以上が経過した。
舞台は北海道、函館。
この本を読むと、当時の函館がかなり世界に開かれていたことを知って驚く。東京から遠く離れた場所で、こんな世界があったのだ。
海外の外国船が行き交う函館を舞台とし、外国と日本とが交わる水上を管轄とした水上警察署の署員達の活躍を描く四編プラス森林太郎が函館を訪問した際の出来事を綴った番外編。
主人公はアメリカで何年か放浪し、フェンシングの名手でもある水上警察署の次長、五条警部だけれど、その他の署員達も個性豊か。さらに署員以外にも一読忘れがたい人物が登場する。
短編とはいえども、個々の話は緩やかに繋がり連続し、続きが気になる展開をする。
異国情緒が感じさせられるといえば、横浜や神戸、長崎といったところだが、当時の函館がこんなにも面白い場所だったとは気がつかなかった。明治という時代なので山田風太郎の明治物と似たような雰囲気もあるが、山田風太郎の描く明治とはまた少し違う雰囲気でこれは作者の持ち味なんだろう。
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