岩岡ヒサエが描くキャラクターは四等身のかわいらしいキャラクターで、『オトノハコ』のようにほのぼのとした物語がぴったりとあうキャラクターなのだが、一方で『土星マンション』のように地表に人間が住むことができなくなり、地上三万五千メートルの上空にリング状のコロニーを作って生活するようになった未来の話のようなSF漫画においても何ら違和感を感じさせない絵柄でもある。
『星が原あおまんじゅうの森』では塀で囲まれた森の中で生活する青年と、その森の中でのみ姿を見せる精霊との話だが、ほのぼのとした話もある一方で、主人公の青年がこの森の中で生活するに至った理由はほのぼのからかけ離れた理由であり、恨みや憎しみが描かれる。
キャラクターの絵だけを見ればかわいらしいだけに過ぎないようにも見えるのだが、作者が要請する人生における様々な残酷さを無理なく体現させるだけのポテンシャルを持ち得ているのだ。
もちろんそれはキャラクターの存在だけではなく作者の物語の描き方という力量の影響も大きいのだが、この絵でどんな話を見せてくれるのかということを考えると読むのが楽しみでしかたのない漫画家の一人だ。
『星が原あおまんじゅうの森2』岩岡ヒサエ
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