『はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか』篠田節子

篠田節子は時々SFを書く。
なのでもう少し読まないといけないよなあと思いつつ、時々しか書いてくれないのでついつい読むのをさぼるというか後回しにしてしまう。
しかし、今回は何しろ題名が題名なので早速読まないといけないよなと思い読むことにした。
冒頭の「深海のEEL」は題名からして笑えるのだが、駿河湾沖で捕れた巨大うなぎがその体内にレアメタルを含んでいたというところからドタバタ喜劇が始まる。いかにして効率よくうなぎからレアメタルを精製するかという問題から、何故レアメタルを含んだうなぎが発生したのかという謎、そして最後に笑う者は誰なのかという結末に至るまで手際よく楽しむことができる。
「豚と人骨」では、遺産相続をめぐる骨肉の争い問題から始まり、それを解決するためにマンション建設をしようとして地面を掘ったら人骨が出てきて、それが縄文時代の人骨だったことから大騒動になる話なのだが、こういう場合にうっかり古墳などが出てきてしまうと、笑うに笑えないやっかいな情況になってしまうというのが勉強になったのだが、まあ自分には縁のない知識だ。人骨と共に古代の寄生虫が蘇って大騒動となるのだが、作者が用意した解決策がこれまた笑える。
表題作は題名から来る期待値の高さに比べるとちょっと不満。まあこれはこれで面白いけれども。
しかし、最後の「エデン」で驚いた。
工事期間、六十三年という世代間宇宙船ならぬ世代間トンネル掘りの話。
「会社」に雇われた人々が「村」を作り、そこで必要最小限の生活文化を維持しながら、子を産み育て、工事期間六十三年という果てしない長さのトンネルを掘り進める。
彼らは何者なのか、「会社」とは何なのか、トンネルを掘る理由はなんなのか、そして「エデン」という題名の意味は。
恐ろしいことに篠田節子は、全ての謎に対して地に足のついた合理的な答えを出してSFとして読む必要性すら無くしてしまいながらも感動的なまでにこの物語をSFとして成立させている。

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