『苦い雨』樋口有介

全然気にしていなかったけれども、著者のあとがきや解説によると樋口有介は文庫化されるとかなり手を加えるらしい。
『ろくでなし』などは文庫化されるにあたって主人公が柚木草平に変わってしまって柚木草平シリーズの一つになってしまったくらいなので、そんなには驚かなかったけれども、そんなことを書かれると、文庫化されるまで待った方がいいようにも思えるが、まあそこは個人の好きずきだろう。今回は三人称を一人称にしたということだけれど、三人称のままのほうが好きな人もいるだろうし、そんなことまで気にしない人もいるだろう。
どちらかといえばにわか樋口ファンなので、えらそうにはいえないけれども、樋口有介の小説は一度はまると癖になる。一冊読みおえてしまうと次の作品を手に取りたくなってしまうのだ。
柚木草平シリーズの場合は基本的にどれでも同じというか柚木草平の個性がシリーズを引っ張っていくので一冊読みおえても、踏みとどまることができるけれども、柚木草平とほとんど互換性がありながらも決定的に違う何かを持つ、この『苦い雨』を読み終えた今、樋口有介の次の作品を手に取りたくって仕方がない。