『チョコレートゲーム』岡嶋二人

誘拐を扱ったミステリでデビューしたせいで長いこと岡島二人の小説は読んでいなかった。
最初に読んだのはコンビを解散した後、井上夢人単独で書いた『ダレカガナカニイル…』で、その次が『おかしな二人―岡嶋二人盛衰記』という始末だ。
岡島二人の作品にはスマートさみたいなものが強い印象があって、それはそれでいいのだけれども、そのスマートさが読んでみたいという強い欲望をかき立てられないでいた。
が、まあ今回、これを読んでみた。
読んでみてやっぱり岡島二人の作品はスマートだったけれども、それ以上にわずか280ページほどの分量でこれだけの話を書くことができることに驚いた。無駄がない。
犯人扱いされ亡くなった息子の無実を証明するために奔走する父親の物語であるが、分量が分量だけに展開がスピーディなのはもちろん、終盤の謎解きにいたるまで不自然な部分が全くない。
仕掛けられたトリックといい、チョコレートゲームの謎といい、ダイイングメッセージといい、ほれぼれするような筋運びだ。
岡島二人の長所でもあった、時代に沿った物語作りという部分が、今となっては風俗的に古びてしまっていて、そこが欠点になってしまっているのが惜しいところだなあ。

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