『まごころを、君に THANATOS』汀こるもの

前作に比べると世間での評判はちょっと悪いようだが、前作のミステリに関する突き抜けというか挑戦的な部分がアクが強すぎて楽しむことができなかった身としては、今回の方がわりと好みだったりする。
といっても、前作以上に注ぎ込まれた水生生物の飼育に関する蘊蓄は物語全体のバランスを崩して、ついつい読み飛ばしをしたくなるのだけれども、蘊蓄部分はそれほど苦にならず、それなりに楽しんで読んでいたので、わりと魚の飼育に興味があるのかも知れないなと気付かされた。
そんなほのぼのとした展開が続くので、今回はそんな話なのかと思ったら中盤過ぎて起こった事件があまりにも殺伐として、そのギャップにちょっと置いてきぼりを食らいそうになってしまう。
本来ならば楽しくなるはずの学園祭、学園祭ミステリといえば米澤穂信の『クドリャフカの順番』をまっさきに思い出すのだが、アレと比べるとその落差が激しく、学園祭ミステリにはちょっと入れたくないのだが、作者も学園ミステリとしては書くつもりだったかもしれないが、学園祭ミステリとしては書くつもりはなかっただろう。

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