僕は登山にはほとんど興味が無いし登ったことがあるといえば伊吹山の山頂遊歩道ぐらいなのだが、山岳小説は嫌いではない。
山岳ミステリーというと僕の中では真保裕一の『灰色の北壁』が記憶に新しいが、古い記憶を遡ってみると『ホワイトアウト』も山岳ミステリーの中に入れてもいいと思うし、これを入れるならデズモンド・バグリィの『高い砦』も入るし、トマス・W・ヤングの『脱出山脈』もそうかな。
一方でSF小説になってしまうがダン・シモンズの「カナカレデスとK2に登る」も山岳小説としては面白かった。こういう小説を読むと山に登りたくなる人の気持ちはなんとなくわかる。
大倉崇裕の『聖域』は山岳ミステリ、とくに謎解きとしては本格派に入るので読むのが楽しみだったのだが、読み進めていくとなんだか期待していたのとちょっと食い違ってしまった。
というのもあまり山に登らないのだ。いや、まったく登らないというわけではないけれども、主人公は三年前の事故で山に登ることを止めてしまった人物という設定なのでやむを得ない事情が発生しない限り登らない。山をあきらめた人間としてはそれでも登っている方かもしれないが、どちらかといえば謎解きがメインとなっているので、こればかりは無い物ねだりかも知れない。
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