同じ誘拐物の岡島二人の『99%の誘拐』の後で読んだせいか、ちょっと分が悪い印象になってしまった。
過去にあった誘拐事件とそれから十数年後に起こった家政婦殺しの二つの事件が絡み合う展開なのだが、事件を追うのが、自分は十数年前に誘拐されたのではないかと疑問に思う青年とその恋人、二人組コンビの刑事達なのだけれども、何故か刑事の方は二組登場する。別に一組でも問題なかったんじゃないかと思うのだが、この辺でちょっとバランスが悪く感じられてしまう。
母親が死ぬ間際に残した言葉によって自分の出生の秘密、自分が母親だと思っていた人物は実は自分を誘拐した人間ではないのだろうかと疑問に思い、自分の過去を調べていく。
その展開は地味なんだけれども、徐々に明らかになっていく過程は丁寧なのでそれほど不満に思うことはない。
誘拐事件の方は終戦翌年で、家政婦殺しが昭和36年。物語の大半は昭和36年という時代を描いているのだが、あまりその時代性というものが感じられなかったのが少し面白い。多分、作者の言葉使いが現代的だからなのだろう。
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