ハメット賞受賞ということでミステリ寄りかと思っていたのだけれども、期待したような内容ではなかったのでちょっとがっかり。これだったらミステリのレーベルよりも帆船マークの方で出した方がよかったかも。
降り続ける名もない都市、探偵そしてその探偵を統括する監視員、探偵の調査内容を記録する記録員と業務が明確に分けられ、ある種の迷宮的な要素のある<探偵社>、<カリガリサーカス>、眠り病の探偵助手等々、雰囲気と投入されたガジェットというか設定は抜群に素晴らしい。この手の設定が好きな人にとっては、この設定だけでもう充分に面白い事が保証されたようなものなんだけれども、あくまでミステリとして読もうとしてしまったのでしばらくの間、読みながらとまどってしまった。
しかし、設定を受け入れてしまえば後は何の問題もなく、迷宮の中を漂っているような感覚を楽しみながら読み終えることができた。<探偵社>の雰囲気は強いて言えば映画『未来世紀ブラジル』の役所のような感じだったかな。
ミステリとしてはどうだったかといえば、やはり根底の部分でアレを使っているので、まあ何でもありの世界であり、何でもできるのであれば不可思議な謎でも何でもないともいえるのだけれども、ロジカルな部分においてはそういった部分を多用せずに幻想とミステリとをぎりぎりのバランスで組み合わせているんじゃないだろうか。
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