前作でムーミン一家が海へと出かけている間の出来事なので、ムーミンシリーズ最終作でありながら、ムーミン一家が誰も登場しないという果たしてこれは児童物なのかと言いたくなるような話だ。
さらにその内容の方も、お世辞にも子供向けとはいえない内容で、トーベ・ヤンソンの厳しさがよくわかる一冊だ。
旧版はこんな表紙で内容を的確に表している表紙だったのだが、今回の新版は、この表紙では売れないと思ったのかちょっとマイルドな絵に挿し変わってしまっていて残念だ。
空気の読めない中年男、ボケ老人、ヒステリ気味で引きこもりの女、ムーミンママに優しくされたい少年等、子供向けの物語にはそぐわないキャラクター達がムーミン一家に癒しを求めてムーミン屋敷に訪れるのだが、ムーミン一家は不在。こんな集団を前にして、頼みの綱のスナフキンでさえ空回り気味だ。
そしてこんな強烈な集団がムーミン屋敷で共同生活をし始めるのだ。事件らしい事件は起こらないのに徐々に不協和音は高まり出し、読んでいて異様な緊張感が高まる。果たしてこれは子供向けの話なのだろうか。
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