小さな町を舞台にしたダークファンタジーとくると期待をしてしまう。しかし、少し前に倉数茂の『黒揚羽の夏』が出たばかりでしかも同じ版元、同じレーベルだ。発表されたのは2009年で今回は文庫化であるとはいえ、ちょっと短期間に出過ぎという気もしないでもない。個人的には好きなジャンルなんだけれどもこの手の話は10年くらいの間隔で出てくれると丁度いいと思っている。
で、読んでみると、悪くはないんだけれども、少し物足りない。
子供が読む分には丁度いいだろうけれども大人が読むと物足りなく感じてしまうんじゃないだろうか。
物語の導入部である第一部のパートの雰囲気は悪くない。背中を向けてしか話すことのできない「もののべ様」という設定といい、読んでいてワクワクとさせる。しかし、登場人物に苦難を与えども残酷な目にはあわせさせない作者の優しさ故にか、結末への展開が優しい展開になってしまったのが物足りなく感じてしまったのだ。
特に、全員が揃わなければ解決できないという設定でありながら、その理由が全く説明されていないのが残念だ。
と不満を書いてしまったが、一番の原因は町の地図が無かったせいだろう。地図があったら多分満足したのかもしれない。
コメント