『ねじれた文字、ねじれた路』トム・フランクリン

出版予定にトム・フランクリンの『ねじれた文字、ねじれた路』を見かけたとき、見知らぬ作家だなと思いつつもトム・フランクリンという名前にどこか覚えがある気がした。どこで知ったのだろうか思い出そうと思ったが、そういう時にはネットで調べた方が手っ取り早い。で、調べてみて『密猟者たち』を書いた作家だったことを思いだした。
といっても『密猟者たち』は未読だ。そのうち読んでみようと思いつつも、絶版になっているので古書を当たるしかない。しかし、ネットで探せばすぐにでも手に入れることができるのでなんだかそれも味気ないなと思い、そのままの状態だ。
それにトム・フランクリン自身が寡作な人なので急いで読んでもの凄く気に入ってしまっても他に読む物が無い状態になる。で今回も見逃そうかどうしようか逡巡していたら時々行く書店で売っていたのでついつい買ってしまった。
いつものとおり解説を先に読むと、ランズデールやマキャモンの小説の一節を引き合いに出している。それだけでもう僕好みの話に違いない気がしてくる。
デートに出かけた少年と少女。夜遅くになって少年だけが帰ってきたのだが、少女の事に関して口を閉ざしたままだった。そして少女はそれからずっと行方不明のまま25年の月日が経過した。
ミステリではあるが、消えた少女の謎が焦点となるわけではない。物語は25年後の現在からはじまり、少年は41歳の大人で、そして25年の間、町の人々から人殺しの疑いをかけられ孤独な生活をしている。
一風変わった言い回しと比喩と、それでいてけっして難しい文章ではなく、平易な言葉で物語が淡々と語られ、それでいて退屈とは無縁の文章のうまさがある。どんな文章なのかというと、一部だけ抜き出してもかまわないのだが、一部を取り出そうと思うと、全文取り出したくなる。とにかく読めとしか言いたくない。
白人と黒人、過去と現在、内向的と外向的、様々なものが対比され、そしてそれらは一人の人間の中に混在している。読み終えて、25年という時間の長さと重みをしみじみと味わい続けることになる。
ああ、いくら言葉を費やしても、この物語に関してはうまく語ることができない。

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