『見かけの二重星』つばな

謎の天才科学者が作った物質転送機の事故で二人に分裂してしまった主人公の女子高生。
物質転送機の事故というと「蠅男」のように二つの物が一つになってしまうパターンを思い出すのだが、二つに増えてしまうというパターンはジェイムズ・パトリック・ケリーの「恐竜たちの方程式」があるが、ちょっと珍しいかも。
しかし、この物語が語ろうとすることは物質転送機の事故とその収束という方向ではなく、二人に分裂してしまったことによる主人公のさまざまな葛藤や思いである。だからタイトルが『見かけの二重星』なのだ。
なので最初のうちは、二人に分裂してしまったことに対してはそれほど深刻にはならない。両親に対してもわりとあっけらかんと分裂してしまったことを話してしまうし、悩むことといえば、あこがれの人とデートをすることになるのだが、もう一人の自分にはそのことを隠し、友達と遊ぶと偽ってデートをして罪悪感を覚えるといった類だ。
しかし、中盤になって事態は豹変する。
分裂したもう一人の自分を構成する物質は一体どこから得たものなのかという疑問から、徐々に話が大きく変化するのだ。
ここからの展開はけっこうSF的で、しかもその設定に対してユニークな解釈が取られている。それが納得できる解釈であるかどうかは別としてだが、物語の中においてはわりと整合性が整っているのでそういうものだと受け入れてしまえば特に問題はない。
で、なんだか上手いこと騙された気持ちもしないでもないけれども、綺麗に収束して終わる。

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