かつて、朝日ソノラマ文庫というレーベルがあった。
1975年に発刊し、2007年9月まで続いた。
ライトノベルの走りでありながら、ライトノベルのブームにも乗らず、独自の路線を走り抜けたというイメージがある。
それもそのはずで、発刊当時のラインナップを見回すと、山村正夫・石津嵐・辻真先・加納一朗・光瀬龍・藤村正太・香山滋・高橋泰邦・高木彬光等の作者名がずらりと並ぶ。
今にしてみるとSFとミステリとが混在した豪華な布陣ともいえるのだが、当時からどこか古くさく垢抜けないというイメージがこびりついていた。
そんなわけで、かなりの作品が未読のままで、そして隠れた名作ともいえる作品も数々あった。
秋山瑞人の『イリヤの空、UFOの夏』が『妖精作戦』のオマージュであると知ったとき、まだ朝日ソノラマ文庫は存続していたが、『妖精作戦』は絶版だった。そして古書を探してもなかなか見つからない。
まあ気長に探そうと思っていたら復刊するという情報が入って、それが東京創元社だったから、毎度の事ながらこれがなかなか実際の復刊までは延びに延びたが、ようやく復刊した。
オマージュ元だからといって『イリヤの空、UFOの夏』と同じような内容というわけではもちろん無く、この巻だけみれば『イリヤの空、UFOの夏』と比較すると時代の違いというものをまざまざと実感させられるくらいの大きな差があった。
敵対する組織が悪ではないという設定も良いが、一番の良さは軽妙な会話と気の利いた台詞で、どことなく、たがみよしひさの台詞使いを彷彿させる。が、たぶんこの軽妙さは当時の時代性というものだったのだろう。
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