角川文庫の『不思議な少年44号』は、作者が完成させずにそのままにしておいただけあってそれなりの完成度の話だった。はっきりいって読みづらい。
しかし、マーク・トウェインの死後に編集者が勝手に改竄して発表したバージョンが岩波文庫で出ていて、ネット上の評判もわりと良かったので、ものは試しとこちらの方も読んでみることにした。
巻末に、訳者の解説の他に、この本が改竄バージョンであることがわかった後に追加された解説の二つがあり、これが結構面白かった。角川文庫版では徹底的に否定していたけれども、こちらの方はそれほど否定はしていない。しかもこの話には三つのバージョンがあってそれぞれ内容が異なっているということも書かれている。
岩波文庫は最初のバージョンを元にして三つ目のバージョンの結末を最終章に加えたものということだ。そういう事情を理解した上で読むと、この岩波文庫版の物語はなかなか面白く、マーク・トウェインが書いたものだということにこだわらなければかなり面白い。
しかも、本質的にはマーク・トゥエインのペシミズムが流れているのには変わりがなく、未完成だった物を他者が完成させたと考えれば、改竄バージョンだと非難する理由もない。
ものは試しと思って読んでみて正解だった。
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