『SFの翻訳』矢野撤

以前にも書いたけれども僕にとっての「SFの父」は福島正実で、「SFの母」はジュディス・メリルだ。
で、矢野撤は「SFの伯父さん」という位置づけになる。
『442連隊戦闘団』では第二次世界大戦での日系アメリカ人によって編成された「442連隊」に関するノンフィクションという体裁をとりながら時折、自身のアメリカ旅行記とSFに関する話を盛り込ませたり、『超人集団』ではあとがきで全四ページにわたって本文とは無関係の自分の昔話を語っていたり、まあそれを言うならば「ペリー・ローダン」シリーズを翻訳していた松谷健二も同書のあとがきで「あとがきにかえて」として自身のエッセイを書いていたから、矢野撤ばかりを責めても仕方がないかも知れないけれども、それでも単発の翻訳作品の解説で、その作品や作者に関してほとんど触れずに自分のエッセイを書いてしまうのはいかがなものだろうとも思う。
しかし、そんなことをしても、この人なら仕方が無いなあと許してしまうことができるのが矢野撤の人柄なんだろう。
なので、さぞかし翻訳の事には触れずにSFの事に関してばかり書いているのだろうなあと思ったら、結構真面目に翻訳に関して書いていたので驚いたのだ。読んでいて思わず自分も翻訳までは無理でも原著を読んでみようかという気持ちにさせられそうになった。
もちろん、日本SFの黎明期におけるエピソードも満載で『442連隊戦闘団』で語られなかった部分等、興味深い話が結構ある。
そして、僕は「SFが好きだったらSF以外の本も読みなさい」という矢野撤の言葉を今でも忠実に守っている。

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