『冒険エレキテ島 1』鶴田謙二

やたらと高かった『漫画BOX AMASIA』という本というかまあ漫画BOXというしかない代物に収録されていた鶴田謙二の長編漫画が単独で単行本化された。
この漫画BOXが鶴田謙二の作品だけで構成されていたら買っていただろうけれども、さすがにあの内容と金額では手を出す気が無かったので今回の単独単行本化はありがたい。もっとも、おそろしく寡作な作者なので、新作が出たからといって慌てて手に入れても次の作品が出るまではまた長いこと待ち続けなければいけなく、それを思えば、慌てて読む必要もないだろう。
大石まさるの『水惑星年代記』を読んだとき、鶴田謙二と互換性があるなと書いたことがある。確かに、物語の作りとしては似ている部分があるのだが、改めて鶴田謙二の漫画を読むと、違うよなあと思わせられた。
どのコマも人が主役ではないのだ。鶴田謙二が描いているのは人ではなく、風景であり、そこに人がいるから人も描いている。そんな感じなのだ。だからどのコマも見ていて楽しい。人だけでなくその人が存在している場所も描いているからだ。
スレンダーな娘が登場するけれども、それ以外にはほとんどと言っていいほど爺さんしか登場しない。つくづく鶴田謙二って人は爺さんが好きな人だなと思う。やがて僕も歳を取り、爺さんになるのだが、こういう爺さんになりたいなと思う爺さんが沢山登場するので読んでいて未来に希望が持てるのだ。
続きの連載は決定しているようだが、はたして二巻はでるのだろうか。