『ヴェニスを見て死ね』木村二郎

  • 著: 木村 二郎
  • 販売元/出版社: 東京創元社
  • 発売日: 2011/11/29

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読み始めて、この小説の雰囲気はどこかで前に読んだことがあるような気がしたと思ったら、矢作俊彦の『マンハッタン・オプ』だったことに気が付いた。
『マンハッタン・オプ』は一編が十数ページから二十ページ前後と短い話だったので矢継ぎ早に事件が起こり、あっというまに事件が解決して、それでいてその短さが気持ちいい作品だったけれども、こちらは矢継ぎ早に事件が起こるものの、過不足無く事件と捜査が描かれ、『マンハッタン・オプ』と同じ雰囲気ではあるものの独自の世界観でもって楽しませてくれる。
紙面を費やすことができる分、それだけこのシリーズの世界という物が充足されていくのだ。
エドワード・D・ホックの「長い墜落」ならぬ「長い失踪」はホックの作品にちなんでつけられたのかどうかはわからないけれども、物語の展開はごく普通、地味に展開していき、それ故に事件の真相はおおよそ予測がついてしまうのだが、真相が判明した時点での描き方と事件との間の距離感が面白い味を出している。
文庫化にあたって、ジョー・ヴェニス自身も長い失踪から帰ってきたようで、次の活躍が楽しみだ。

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