主人公は図書館のレファレンスカウンターで働く司書だ。しかし、本が好きで司書を目指し、念願かなって図書館で働くことができたにも関わらず、自分の求める図書館のあり方と図書館利用者の現実とのギャップの大きさに、夢破れ、惰性で業務をこなす日々を送っている。
図書館で探したい本を見つける手伝いをするのがレファレンスカウンターでの主な業務であり、わずかな手がかりから題名もわからない一冊の本を探しだすという図書館ミステリであるのだが、これが単なる本探しのミステリで終わってはいないところが面白いところ。
本を探し出す過程で様々な、本に関する蘊蓄は登場し、そういう話が好きな人にはたまらないだろうけれども、連作短編という形式でそれぞれの話は独立していながら、徐々にもう一つのテーマが浮かび上がってくる。
それは、経済状況の悪化に伴う市の予算削減というところからはじまり、図書館の廃止という話に発展していくのだ。
で、主人公の勤める図書館にあらたに館長として就任してきたのがこの廃止論者であるというところから、主人公は図書館存亡の騒動に巻き込まれていく。
そして主人公は図書館の存続の為に図書館の意義を考え出さなければいけなくなるのだが、図書館業務に失望していたはずの主人公が、図書館を存続させるために見いだした図書館の意義は、当たり前のように本を読んでいる僕にちょっとした感動をあじあわせてくれた。
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